木材を買うな、森を買え
美山里山舎の大工、小関さんを尋ねて京都府・美山町へ行ってきました。
伝統建築をはじめとして、小規模林業、加工製材、薪エネルギー、オフグリッドの暮らしなど。小関さんの実践を貫いているのは、建築と林業、エネルギーや暮らしを別々のものとして扱わず、「流域まるごと」一つの地域循環として捉えるものでした。森を育て、木を伐り、製材し建物を建てる。残った端材を薪として熱エネルギーに変え、その一連の流れを完結させることで、
資源を無駄なく使いながら、仕事と経済を地域につくる。

小関さんが美山に移り住んだのは1993年頃。
まだIターンや地方移住という言葉が一般的ではない時代でした。美山を選んだ大きな理由は、伝統的な木造建築を学ぶため。若狭大工の流れをくむ技術や、美山に多く残る茅葺き民家の構造を通して、重い屋根を支える強固な木組みや大きな梁を飛ばす技術を学んだという。
小関さんが建築について最も大切にしているのは、
「自分の寿命よりも長く残るものをつくる」という責任である。

建物は完成した瞬間が価値なのではなく、何十年、何百年と使われ、修理され、最後は解体される。その時間まで含めて考える必要があると語った。そのため、石場建て、手刻み、天然の乾燥材、無垢材、土壁などを重視し、長く使え、直せる建築を目指している。
一方で、現代の建築が工業化、分業化されすぎていることには強い問題意識がある。
設計、製材、プレカット、施工、内装などが切り分けられた結果、建築に関わる人が建物全体を理解しにくくなっているという。小関さんは、大工や建築家は、単に自分の専門だけを知るのではなく、山、木、左官、屋根、建具、家具まで含めて理解する総合的な職人であるべきだと問う。
木材を買うな、森を買え。
美山里山舎の事業は、建築を出発点に、森林経営、作業道整備、伐採、製材、建材加工、薪ストーブ、薪ボイラー、林業機械の開発へと広がってきた。特徴的なのは、山から建築までの流れを一体で考えていることである。

製材についても、美山里山舎は自前で行っている。もともとは、伝統建築に必要な大きな梁や特殊寸法の木材が市場で手に入りにくくなったことがきっかけだった。そこで小型製材機を導入し、必要な寸法の材料を自らつくるようになった。原木をそのまま売るのではなく、床板、壁板、柱、梁、木ずりなどに加工することで、同じ木から大きな付加価値を生み出すことができる。また、製材時に出る端材や小径木も薪として利用することで、木をできる限り使い切る。
美山里山舎の考え方では、森林経営の入口と出口の両方を押さえることが重要になる。
入口は、山に道をつけ、木を出せる状態をつくること。出口は、建築やエネルギー利用といった木材の使い道を持つことである。この両方があることで、伐採、製材、加工といった途中の工程も経済として成立しやすくなる。

オフグリッドの暮らしについても、一般的には太陽光発電や蓄電池が注目されやすいが、小関さんはまず水の確保が重要だと語った。美山里山舎の敷地では、谷水や井戸水など複数の水源を利用し、生活に必要な水を確保している。飲み水だけではなく、洗濯、風呂、農業など、生活全体で必要な水量を考えなければならないという。
電気については、小規模水力発電や薪ストーブの熱を利用した発電にも取り組んできた。しかし、重要なのは発電量を増やすことだけではなく、そもそも電気を大量に必要としない建築をつくることだと考えている。風の通り道、建具の配置、軒、自然光、土壁の調湿性や蓄熱性などを活用し、機械設備への依存を減らす。
暖房や給湯では薪ボイラーを活用し、薪で温めた温水を各部屋のパネルに循環させることで、住宅全体を暖める仕組みである。住宅だけでなく、銭湯、宿泊施設、農業用ハウス、公共施設などへの展開も想定している。また、薪ボイラーを重要視する理由は、単に化石燃料を減らせるからではない。

薪の製造、運搬、投入、設備管理という仕事を地域に生み出せるからである。林業や製材で発生する端材を地域で回収し、燃料として販売することで、設備を売って終わりではなく、継続的な地域ビジネスにすることができる。
これからの家づくりや地域インフラのあり方について、行政を過度にあてにするのではなく、自分たちで魅力のある暮らしや建築をつくることが重要だという話があった。単に移住者を募集するのではなく、そこにしかない暮らしを実際につくり、その姿を見せることで、人が引き寄せられるという考えである。
島に置き換えると、古民家一軒の再生にとどまらず、集落全体の資源循環へと視点を広げて必要があると感じた。建築だけをつくるのではなく、建築を起点として「集落の経済と暮らしをエリアまるごと再設計する」ということ。

美山里山舎の実践から最も強く感じたのは、「地域資源」とは、単に山や木が存在することではないということだった。木を育てる視点、木を切る技術、道をつくる技術、製材する技術、建てる技術、燃料として使うこと、そしてそれらを経済としてつなぐ仕組みが揃って初めて、資源が地域の力になる。

建築とは、一軒の家を完成させる仕事ではなく、
その土地で人がどう生き続けられるかを考える仕事でもある。
山、水、土、木、エネルギー、仕事、住まい。それぞれを別の制度や産業として分断するのではなく、もう一度一つの暮らしとしてつなぎ直す。今回の美山里山舎での視察は、人口が減少していく地域で、これから何を残し、何を自分たちの手に取り戻していくのかを考えるそんな機会になった。
私たちのシマは、どうだろうか?
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