COLUMN お知らせ 2026.09.06

木を植えた男に憧れて

わたしがこどものころに影響を受けたフランスの作家ジャン・ジオノの『木を植えた男』という短編物語。

南フランスのプロヴァンス地方を思わせる、乾ききった荒野で生きるひとりの羊飼い、エルゼアール・ブフィエ。

彼は毎日、良いドングリを選び、ひとつずつ植えていました。それは、誰かに頼まれたことではありません。報酬があるわけでもなく、自分の土地ですらない。ただ、自分がいま生きている土地が荒れているから、木を植える。ただ、それだけのこと。

それを何年も、何十年も続けた。

戦争が起きても、社会が変わっても、彼は淡々と変わらずに植え続ける。その結果、いつしか荒野には森が生まれ、森が水を蓄え、川が戻り、鳥や動物が戻り、やがて戦争も終わり、人々に豊かな暮らしが戻ってきたのだ。

けれども、その男はこの世を去り、その男の存在を誰も知らない。そんなブフィエというひとりの男の人生に、私は、子どものとき、心動かされた。

彼は、「世界を変えよう」とは叫ばない。彼には大きな理念や、演説もない。運動もない。組織もない。もちろん、SNSもない。あるのは、今日植えるドングリだけ。

木を一本植えても、明日の世界は変わらない。むしろ、ほとんど何も起こらない。種は腐るかもしれないし、芽が出ても枯れるかもしれない。

それでも彼は、その日を信じて植え続ける。わたしは、そこに希望を見る。ブフィエがつくっているものは、自分の人生よりも長く続くものだからだ。

木は、自分が死んだ後も育つ。森は、自分がいなくなった後に戻ってくる。自分の「成果」を見るためのわかりやすい仕事ではなく、自分がいない未来のための時間を彼は生きていたのだと思う。私は、それも美しいと思うのです。

そんな男に憧れて、

わたし、今日をいきている。

書いた人

山下 賢太

代表取締役

山下 賢太/ KENTA Yamashita

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