島に帰る

島に生きるひと

2010年04月29日

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昨日の正午、祖父が鹿児島市内の病院で息を引き取った。
無口で、頑固で、無愛想。

うまく言葉にはできないけれど、祖父とは、幼い頃からずっとこころの中でお互いに会話してきた気がする。僕が島を離れるときも、いつも皆のいる港からではなく、遠く離れた堤防の上からひとり手を振っていた日のことを思い出す。

いま、その祖父が無言のまま目の前に横たわっている。そして、二人きりのこの部屋で、あの頃と同じように、僕らはまた話をしている。初めての二人きりで、何から話せばいいのか分からないけれど。

ふたりのあいだには、話したいことが山ほどあるから。寂しさよりも、悔しさが募ってゆく。通夜の騒ぎも落ち着き、家族は皆あすの葬儀に向けてひと眠りしている。今夜は風が強い。島を渡る風の音が、遠くの海に消えていく。

串木野港を出発して約一時間。カシアミ・イオセー・ブイカブシ
祖父の漁場が大きく揺れた。波は高く、風は強く。祖父の棺桶も揺れた。

港には喪服で、祖父の帰りを待つ人びとの姿。
三時間で三百人を超える弔問客。僕は揺れる船の上で確かに感じていた。

島に生きるとは、島に死ぬということを。

祖父が、脳卒中で倒れてから約四年。ようやく島に帰ることができました。正雪じいちゃん、お帰りなさい。そして、ずっとずっとさようなら。

ヤマシタケンタ

ヤマシタケンタ

1985年鹿児島県上甑島生まれ。JRA日本中央競馬会競馬学校を中退したのち、キビナゴ漁船の乗組員を経て京都造形芸術大学環境デザイン学科地域デザインコース専攻。故郷をもっと好きになりたくて島に帰る。東シナ海の小さな島ブランド株式会社の代表取締役兼百姓を務める。

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