島嶼地域の医療、福祉、介護のこれから
昨年、屋久島未来ミーティングでご一緒した屋久島尾之間診療所の杉下智彦先生らが発起人となるプロジェクトがいよいよ動き出しました。願わくば、屋久島地域の医療と介護と福祉が、それぞれの業界を超えて共創していく地域社会のこれからのモデルになって欲しいなぁ。通所リハビリや、障がい者就労レストラン、歯科診療所に加え、子育て、移住者支援のコーディネーションセンターなどを配置するとのこと。そして、屋久島の自然環境を生かした建築設計にも、密かに期待しています。
現在、私が暮らす甑島は、ドラマや映画・漫画にも取り上げられた、ドクターコトー診療所のモデルになった島です。いろいろな方々の尽力によって、なんとか診療所の運営は成り立っていますが、慢性的な人材不足は続いており、根本的な解決や方向転換、原点回帰は必要だと思っています。
決して屋久島と同じような施設やサービスを期待するだけではなく、まずは、ここにあるもの。残されてきたものや知恵、人々のつながりを活かしながら、訪問診療や訪問介護など、場に捉われない施設やサービスの在り方のほうも再考し、コンパクトだけれどもより身近で安心して暮らしていける地域内連携の未来図を実現していってもらいたいなぁと個人的には思っています。
私が生きている間に(いつまで生きていられるかわかりませんが)、よほどのことが起きない限り、2万5千人以上の人々が暮らしていた甑島列島は、あと数十年で1,400人ほどまで減ることを国の研究機関も発表しています。あらゆるものが減りゆく右肩下がりの島で、相対的に場の有り様は、年々変化しているし、人が集まるという場の重要性も高まっています。
けれども、たとえ「施設」という場がなくとも、人々が自立して繋がりあえるような場面と、外部にもたくさんの頼れる先があれば、実はその目的を果たすことはできる。何かが国家資格になったり、施設ができたりしたことで救われる人がいる一方で、制度が整うほどにサービス化してしまい、世の中のライフスタイルや家族の在り方の変化もあって、実はできなくなったことや孤立してしまうことも増えているのではないかと思います。
また、島という環境において、ほんとうに怖いのは、場よりも人と人のつながりを失うこと。そうなってからでは、この島や集落に暮らす意味さえも失っていくのではと感じるこの3年間。場の持つ本質的な意味を時代にあわせて再編しながら、これからの集落づくりの可能性を信じて今後のプロジェクトを進めていきたいなぁと改めて考えた朝でした。
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