かご島インターン in 硫黄島 レポート
次世代の離島人材の育成と交流を目的に、リトラボでは、離島を体感する『かご島インターン』を初開催。今年度は、株式会社ヒラミネ(薩摩川内市・上甑島)と、株式会社いおう(三島村・硫黄島)の2社が受け入れ企業となりました。「離島」というと、たくさんの課題や問題の方に着目してしまいがちですが、鹿児島離島文化経済圏(=通称リトラボ)では、離島の「可能性」にフォーカスし、その挑戦の種と関わりしろを育てていくプラットフォームとコミュニティ形成を目指して活動しています。
離島を体感する『かご島インターン』
みしま椿に関する農作業・火山と生きる島暮らし体験
期間:2023年2月28日ー3月2日
受入企業:株式会社いおう(三島村硫黄島)
人口 120 人の硫黄島では、『みしま椿に関する農作業・火山と生きる島暮らし体験』ができるインターンシップを実施。参加者は、北海道在住の写真家 川村康平さん。以前、ほかの⿅児島離島で写真撮影をした際に、「⼈としての⾃由な⼼を育む⼤切さを学んだ」経験があるという康平さんは、「椿畑の取り組みから⾒える島の⾵景を撮影しながら、島に貢献できることがないかを探したい」と、今回のインターンシップに応募してくださいました。
”島に暮らす人々の関係性”を撮影のテーマとして持った康平さん。硫黄島での暮らし、そして、生き方をみつめる3泊4日となりました。
硫黄島へ向け、鹿児島本港からフェリーみしまに乗船します。
鹿児島本港を出発し、およそ3時間半。現在も火山活動が続いている硫黄岳が姿を現しました。海底火山のひとつである硫黄島は、鬼界カルデラの火口にあたり、海底からは鉄分を含んだ温泉が湧き出ています。絶え間なく湧出する温泉によって、港内は青・緑・赤茶色が織り混じる独特の景観を成しています。
硫黄島港にて出迎えてくださったのは、株式会社いおうの棚次紫寿代(たなつぐ しずよ)さん。現在、椿産業の維持をメインに、椿畑の整備や椿関連の商品開発・販路開拓等に携わっています。今回、これからの椿産業を担っていく人との出会いや、暮らしとともにある硫黄島の働き方を体感できる機会をつくることができたら、とインターンシップを受け入れてくださりました。
初日は、硫黄島のことを知る日として、紫寿代さんが学校や島の名所へと案内してくださいました。
最初に向かった先は三島村立三島硫黄島学園。1年生〜9年生までが学び舎を共にしています。全校生徒はおよそ20名ですが、そのうち半分近くが『しおかぜ留学生』つまり、島外から山村留学でやってきた子どもたちです。
郷土芸能のメンドンをつくる授業では、『ちいきの先生』として島の方が子どもたちにお面の作り方を教えていたり、島の魅力を伝えるマップやカードをつくっている女の子たちと出会ったり、学年を超えてスポーツを楽しむ中学生の姿がありました。学園での先生や周りの大人たちから子どもたちへの関わり方を見たり、お互いを思いやる生徒さんたちとの交流を通して、硫黄島らしい人と人との関係性が少しずつ見えてきました。
その後、歴史的名所でもある俊寛堂や、硫黄岳を望む平家城跡展望台などを散策。硫黄島にまつわる歴史物語、硫黄島の成り立ちを聞かせていただきました。
日没頃に合わせて、学園の女の子たちに教えてもらったおすすめスポット「岬橋」へと向かい、夕陽を眺め、インターン初日を終えました。
2日目は、いよいよ紫寿代さんがメインで行っている椿事業のお手伝いに同行します。
まずは、椿油の瓶詰めの作業をしました。ひとつひとつ、丁寧に作業を進めます。
次に、椿油を抽出する工場の見学へ。今年、初めてこの機械で搾油した椿油が出来ました。これまでは搾油を島外に外注していましたが、しっかりと実の選別をしながら、質にこだわった満足いく油を搾油できるように、と島内での搾油がはじまっています。
そして、椿畑の整備作業へと向かいます。
伸びすぎてしまった竹の伐採をしながら、畑の整備をします。傾斜のある畑で、何往復もしながら落ち葉や折れてしまった木々を集めました。
畑での整備作業を終えた康平さんは、椿畑での商品撮影を提案。落ちた椿の実を拾う様子を再現するかのように、今朝できたてのボトルを紫寿代さんの手で拾うシーンの撮影もしました。
インターンシップを終えて
今回のインターンシップを機に、初めて硫黄島に訪れた康平さん。他者を思いやる心を持った子どもたちとの出会い、この島で継承されている生業の見学やそこで働く人々と交流し、「この島は、人を思う心の原点に戻れる」感覚を持ったと話します。
その感想を聞いた紫寿代さんは、「仕事をするにしても、島民それぞれがお互いに関係性が深く、自分が快適に生きるための鍵を相手が持っているからこそ、相手への思いやり、想像力を持つことにつながるのかも」と、人を思いやる心がこの島で育まれている理由を教えてくださいました。
また、働くことと生きることが繋がっている島民の暮らしぶりを間近で体感したことで、康平さんは、実際に島で暮らそうとしたときに自分はどう役に立てるのか、という問いを持ったと話します。今回は、写真家として、島の人々の暮らしやこの島独自の景観を記録したり、紫寿代さんの関わる椿の商品の宣伝写真の撮影をしたりと、訪れた硫黄島のことを想い、自ら関わっていく姿がありました。
今後も「挑戦が生まれる海域をつくる、」鹿児島離島文化経済圏を応援・共創してくださる法人会員(リトラボパートナー)、個人会員(リトラボサポーター)も、以下のURLにて引き続き募集しています。よろしくお願いします。
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