island company インターン奮闘記 #15
今週は、鹿児島市内で3日間にわたって開催された『薩摩会議』に参加しました。薩摩会議は、“150年後の世界に、私たちは何を遺すのか”という問いに鹿児島県が一丸となって向き合い、新しい可能性や未来を創造する対話型カンファレンスです。
DAY1 学校が地域文化をアーカイブする
DAY1のオープニングセッションでお話されていた一人で、鹿児島県の廃校を舞台に新たな学校を立ち上げる準備を進めているふるかわりささん。柔らかく、優しい雰囲気が溢れていながらも芯のある言葉を持っている方でした。
私が印象に残っているのは、りささんが仰っていた学校の役割。「学校が地域の文化をアーカイブする・ハブになることで、その地域に学校がある限り、それぞれのローカルが彩られる」“地域学習”や“公教育”とはよく言うけれど、確かに学校ってそういう役割にもなれるし、点で見てただこどもたちが地域の文化を知る・経験するだけではなく(こども側が得るもの)、線として長い目で見ると、学校で地域の文化を受け継いでいくことができるということです。確かに私の地元の中島でも、中学生が島に伝わる水軍太鼓を、小学生が道具踊りを授業の一環としてやっているから、今でもその文化が存在してるし、着実に引き継がれています。地域文化の継承ハブとしての学校の役割を再認識し、その価値を高めることが、今後の地域における学校にとってキーになる気がします。
DAY2 限界の先へ
DAY2のローカルセッションは、鹿児島県内各地に分散し、それぞれのテーマごとに探求を深めました。甑島もそのうちの一つとして「限界の先へ」をテーマに、超高齢化社会を迎える日本の縮図であり、未来である人口50人の集落 瀬々野浦を、地域や農村のローカルプレイヤーたち約30人が訪れました。
私はアテンドのアシスタントとして、イベント前から行程の作成や会場の手配などを行っていたので、当日も受入側として動いていました。今までは私はサポート側として関わってたけれど、今回は私が主体で関わる初めての視察だったので、学びの多い大きな経験になりました。アテンドの方でいっぱいいっぱいになりつつ、ゲストの方のセッションやバスの中での参加者の皆さんのお話から学ぶことももちろんたくさんありました。
10年でできることなんてないのだから
DAY1に基調講演をして下さった安宅さんの「10年でできることなんてない」という言葉が、ポジティブな意味で私の心のど真ん中にずどーんと入ってきました。すぐに成果を求めず、長い視点を持つことの重要性を自分の中で納得できつつあることが、甑島に来て一番大きい変化な気がしています。今の社会は日々目まぐるしく変化し過ぎていて、あらゆるものに流行があります。その中で新しいものがどんどん出てくるため、早く結果を出すことを求められている気がするけれど、そこに囚われるべきでは無いと心から思いますし、自分に何度も言い聞かせています。
瀬々野浦セッションでは、何が行われるか分からない中、3名も瀬々野浦住民の方が来て下さいました。
人口50人の瀬々野浦にこれだけの人が訪れ、コミュニティセンターで瀬々野浦の未来を考える場を設けたことが、この集落にとって、island companyにとって、日本の過疎地域の未来にとって一つ大きなことだったと思います。
自分の大事なものを守るために自分の範囲を広げていく
DAY3は、〇〇×transformationの様々なテーマに別れてセッションが行われました。
自治のセッションでは、「”便利にさせない・依存させない”ことで本来の自治を取り戻していく」というお話がありました。都市はその極端にあると思っていて、あらゆる商品・サービスが溢れていて、とても便利で、人々はそれらに依存しています。それゆえに、自分ゴトの範囲がどんどん狭くなっています。「不便」という田舎のいわゆる弱みを強みと捉えることで本来の自治を取り戻していく。それが過疎地域の可能性ではないでしょうか。”自分”の範囲を広げていくことが自治の真理な気がしています。
コモンズのセッションでは、「コモンズとは極めてプライベートで、自分にとってすごく大事だけど、一人では守り切れないからみんなで作る、守る、そこからコモンズが生まれる。」というお話がありました。組織やマジョリティを優先して自分を犠牲にするのではなく、起点は自分であり、自分の大事にしたいものを大事にすることがコモンズの動機だということが非常に人間味があり、矛盾や苦しさが生まれない考え方で私はすごく好きです。
たった一人のそのお客さんのために
非常に濃い薩摩会議の翌日には、6月ぶりに行商に同行しました。
まずはとにかく、前日までの薩摩会議とのギャップがすごかったです。一日に回る集落は3つほどですが、その中で何十箇所も車を停めます。そこで買いに来るお客さんは一人ということがほとんど。”一人のお客さんのために車を止める”これって本当に本当にすごいことだと思います。効率性を考えたら絶対に切り捨てられる部分を取りこぼさず、豆腐やパンを届けている。社会のためとか地域のためとか主語の大きいものではなく、たったひとりのその人のために商売をしている。それはとても尊いことです。しかし、それを続ける限界ももちろんあって、そのウルトラミクロとマクロをどうしたら両立できるのか。大きな動きの中では取りこぼされてしまう非効率な部分を大切にするためにはどうしたらいいのか。薩摩会議で議論された壮大なビジョンや未来と確かにここにある日常のギャップをひしひしと感じたと同時に、やはり私はそこの翻訳者になりたいです。
気がつけばインターンも残り一週間となりました。
4ヶ月を振り返りつつ、一日一日を噛みしめながら最終日まで走り切りたいです。
岡田 栞那 プロフィール
愛媛県の沖合に浮かぶ人口約2000人の島「中島」の有機農家のもとに生まれ育ち、外国人技能実習生の受け入れに関わる中で現状の体制に課題感を持つ。現在は、「島全体として技能実習生を受け入れ、彼らを巻き込んだまちづくりの事業を立ち上げたい」というのが目標。2024年春の鹿児島離島文化経済圏主催の「離島を体感するかご島インターン」をきっかけに甑島へ。island companyが描いている未来を一緒に創りたい、もっとこの人たちが考えていることを知りたいと思い、2024年6月より4ヶ月のインターンをスタート。