island company インターン奮闘記 #12
今週は種子島から鹿児島本土を経由し、沖永良部島に上陸。
沖永良部島は、甑島と同じくらい訪れたいと思っていた島だったので、このような形で来ることができました。思い続けていれば必ずそのタイミングがくるのだと教えてくれているようでした。
沖永良部島では『ISLAND ZEBRA CONFERENCE 2024』を開催。地域課題の解決に向け、ビジネスの手法を活用し、社会的・環境的なインパクトを生み出しながら収益を確保する『ローカル・ゼブラ企業』の創出と育成尾目指す中小企業庁の事業の一環です。
*ローカル・ゼブラ企業=地域の課題を解決し、同時に経済成長を実現することを目指すゼブラ企業の概念に基づいています。ゼブラ企業とは、2017 年にアメリカで提唱された、社会課題解決と経済成長の両立を目指す企業のことです。
鹿児島の島々や他地域で地域づくりに取り組んでいるプレイヤー約40名が集まり、それぞれの取り組みをプレゼンし、フィールドワークを交えながらこれからの島のビジョンをディスカッションしました。
数多くの地域プロデュースや企業ブランディングを手がけ、現在は香川県三豊市に拠点を置く古田秘馬さんから、導入セッションとして、なぜ今ローカル・ゼブラ企業が求められているのかお話しいただきました。
地域の中と外をつなぐ”外向的な人”が多い地域は面白いという話を聞きました。外向的な人だけが必要な訳ではなく、それぞれの役割があるけれど、私も地元では外向的な地元民の部類にいることもあり、そのような人材がどんな動きをするか、そのような人材をどのように増やしていくかが重要だと感じました。
共創文化が生み出すもの
三豊市では、地元企業が出資し合って会社を立ち上げたりホテルをつくったりと、地元のプレイヤーによる“共創”がどんどん生まれています。その裏には、ざっくりと“みんなでやりましょう”ではなく、最初に責任の所在を明確にすることが重要だとのこと。私も「これ誰の役割?責任?」となった経験があるからこそ、その話にはすごく納得したし、そうすることでそれぞれのポテンシャルが最大限に発揮され、関係者が気持ちよく関われるのではないかと思いました。
また、そんな圧倒的共創文化があるからこそ、若者もどんどんバッターボックスに立たせてもらえる環境もあるそうで、今回登壇してくださった田島颯さんは、24歳で地域交通事業者から出資を受け、交通会社の代表取締役に。そんな地域に若者は戻ってきたくなるよなぁと思います。
バックキャスト思考で課題を価値へ
基調講演をしてくださったのは、沖永良部島を生活の拠点にしながら「笑顔あふれる持続可能な社会づくり」を提案する石田秀輝先生。
石田先生が提唱する『バックキャスト思考』が印象に残っています。どんな社会を創りたいかを先に考えて“今”を見る。そのためには、“問題を肯定する”ことが必要だということでした。
問題を問題として捉えると、それを排除できない場合は“我慢”になってしまいます。例えば、「水資源の枯渇」を問題として捉えたときに「お風呂に入らない」といった我慢の解決策が浮かび上がります。この一連の動きには負のエネルギーが漂っています。ですが、問題を排除すること=我慢ではない解決策として、水の使用量を減らした泡のお風呂を開発するのはどうだろうか、と考えると次の可能性につながります。
問題を肯定し、排除する対象ではなく可能性として見ることができたら、今の社会はもっとずっと明るく見えるはずです。
2日目の朝は、家族で毎日ビーチクリーンを行っている『うじじきれい団』の皆さんとビーチクリーンに。
地元の中島でも、学校や地域の行事で海岸清掃をしたことは何度もありましたが、目につく大きなごみばかりを拾っていたので『マイクロプラスチック』という言葉は知っていても、それを見たことも拾ったこともありませんでした。しかし今回、ピンセットをもって目を凝らしてみるとカラフルなマイクロプラスチックが砂に交じって無数に落ちていました。
うじじきれい団の皆さんは、「大きなごみはみんな拾うけど、マイクロプラスチックは誰も拾わないから、私たちが拾っている」と言っていて、“小さいもの”は気づかれにくいけど、そこにちゃんと気づいて向き合っている彼女たちにすごく大切なことを教えてもらった気がします。そして、“自分たちがやりたいからやっている、いつでもやめられるように寄付は受け取らない”というスタンスもすごく素敵だと思いました。大人や社会からの期待や評価をいい意味で気にせず自分たちの純粋な思いで活動している姿が眩しかったです。
日中は、きくらげの茎やさとうきびの搾りかすなど、島で廃棄されるものを使った飼料を独自で開発し、畜産を行っている要ファームの要秀人さんや、親子の居場所SMAPPYを運営する新納佳恵さんにお話を伺いました。
プレゼンをお聞きして、お二人とも日々試行錯誤されているんだなということがとても伝わってきました。私がすごく印象的だったのは、お二人に対して皆さんが様々なアイデアを提案していたこと。一方的な視察ではなく、それぞれの自分の島や地域でやっている経験や知見をもとにした型にはまらないユニークなアイデアが飛び交っていて、私もすごく参考になったし、そんな光景からこうやって島を超えて海域で共に島づくりをしているのだと感じました。
今回お会いした皆さん、“遊び心”を大切している方々ばかりでした。既存の型や価値観にはまらず、前提を疑いながら、何より自分がわくわくするような事業や未来を描くこと。
私の何歩も先を行っている先輩方と距離を感じることもありましたが、楽しそうな皆さんを見て、少しだけ前向きになれた自分がいます。
その後はカンファレンス会場に戻り、2日間の学びをもとに、今後の島の在り方やつくりたい島の未来をみんなでディスカッションしました。
心豊かな未来を「暮らし」「産業振興」「文化」「自然環境」「教育」に分けて考えていく中で、大切なものはもう既に島に“ある”のだということをつくづくと感じました。自然と距離が近いからこそ、人間もその一部だという自然との共生の意識、医療従事者や介護士などの有資格者だけではなく、みんなが当事者として支え合う共助の文化、学校の中だけではなく地域との関わり合いの中で育まれる偏差値では測れない“生き抜く力”。
それらは次の時代の重要な土台になるという確信がありつつも、既存の社会の仕組みや価値観では光が当たらないからこそ、新たな指標やものさしが必要です。
この数日間は自分の言葉と芯を持った先輩プレイヤーに囲まれ、自分が何者でもないことを過去最高にひしひしと感じた時間になりました。それと同じくらい自分がインターン生として、事務局の一員として、このカンファレンスに参加する意味や必要性に押しつぶされそうになる瞬間は何度もあり、正直プラスの感情ばかりではありませんでした。
しかし、まさに私はこのためにインターンに来たのだったと。荒波にもまれながらも、そこから逃げることなく、このような場に参加させて頂けることに感謝し、常に謙虚に誠実にいられるかに私の伸びしろがあると思います。
この刺激的な学びを自分の中で整理し、日々の仕事に緩やかに落とし込むことが残り1カ月の目標です。
島には夢が、未来がある。
そのことを確信した2日間になりました。
そして、そんな可能性の塊である島に私は関わり続けたいと改めて思います。
岡田 栞那 プロフィール
愛媛県の沖合に浮かぶ人口約2000人の島「中島」の有機農家のもとに生まれ育ち、外国人技能実習生の受け入れに関わる中で現状の体制に課題感を持つ。現在は、「島全体として技能実習生を受け入れ、彼らを巻き込んだまちづくりの事業を立ち上げたい」というのが目標。2024年春の鹿児島離島文化経済圏主催の「離島を体感するかご島インターン」をきっかけに甑島へ。island companyが描いている未来を一緒に創りたい、もっとこの人たちが考えていることを知りたいと思い、2024年6月より4ヶ月のインターンをスタート。