ここでしか出会えない甑島の旅
いわゆる物見遊山的な観光ではなく、
世界に誇れる甑島の日常を守りつないでいきたい。
そんな想いで「懐かしい未来の風景」を守り育てる会社として、東シナ海の小さな島ブランド株式会社が始まりました。耕作放棄地を再生しながらの米づくりにはじまり、集落唯一のとうふ屋さんやパン屋さんなど甑島の日常をつくっていくような店づくりに取り組んできました。
そこから10年が経ち、田畑を耕していた私たちは、これからの集落づくりに関わる分野まで活動の裾野をゆっくりと広げています。
甑島の日常は、
誰かにとっての非日常。
これまでいくつもの日常の風景をつくってきた私たちだからこそ、この島を訪れてくれる旅人たちに伝えられる風景があるのかもしれないと思いながら、この記事を書いています。今、甑島に行ってみたいと考えているあなたに。もしくは、久しぶりに行ってみようかなと考えているあなたに、この記事が届いたら嬉しいな。
歴史も景勝地も素晴らしいのは、もちろんのこと。
選択肢は決して多くないのですが、ここには、素敵なお店や景色の中で暮らす素敵な島びとたちがいます。甑島は、九州本土から高速船で50分と日帰りもできる島なのですが、着いたら別世界が待っています。
正直なところ日帰りではもったいないし、1泊2日だとちょっぴり慌ただしい。個人的には、2泊3日以上がおすすめです。
はじめての甑島旅行がうまくいくコツは、なるべくあれをしようこれをしようと意気込まないこと。海外旅行をしていると思って、島の流れに身を任せ、ゆったりとした時間の中で出会える風景や島びとたちとの出会いに、ありのままの自分で飛び込んでみると、きっと素敵な時間になることでしょう。
まずは、予約しておきたい甑島のホテル・民宿・ホステルをいくつかご紹介します。
FUJIYA HOSTEL
長年釣り人たちに親しまれてきた舟宿ふじ。
2018年に、集落唯一の豆富や「山下商店甑島本店」が引き継いだ1日4組だけの小さな島宿 FUJIYA HOSTEL(フジヤホステル)としてリニューアルしました。
南国情緒を感じる玉石垣の美しい武家屋敷通りを抜けて、上甑島の里港から車で5分。ちょっぴり変わった出窓のある、木造平屋の古民家。
こちらの宿は、山下商店甑島本店 が運営しているから「濃厚よせとうふと干物の朝ごはん」は、はずせません。歩いて20秒もすれば、そこは、海。海風に吹かれて一枚一枚手開きされた海上天日干しのひものや、新鮮なきびなごの刺身やさつまあげ、九州産大豆の香りが引き立つ大豆ごはんが嬉しい朝です。
お部屋には、テレビもなければ、
時計さえありません。
普段の暮らしでは、ついつい時間を気にしてしまうのですが、ここではなるべく時間を忘れて甑島の滞在を楽しまれてくださいね。また、FUJIYA HOSTELのお風呂ですが、湯船がないシャワータイプとなっておりますので、ご予約の際はそちらも留意されてください。
FUJIYA HOSTEL(フジヤホステル)
Google 口コミ ★★★★☆ 4.6 (2023.3.19 現在)
〒896-1101
鹿児島県薩摩川内市里町里172
https://goo.gl/maps/wVfA8BTtQbrFz1a97
TEL 09969-3-2213
◎ 公式予約サイト https:fujiya-hostel.jp/
駐車場 4台程度
niclass 甑島
2021年、上甑島里港から車で5分。
西の浜海水浴場のシーサイドにオープンした滞在型ホテル。niclassは、「甑島に暮らす」をコンセプトとしており、ホテル名を「ニクラス」と言います。
古くからの玉石垣のまち並みを今に残す集落の雰囲気をゆっくり味わえるよう、外観も伝統的な民家の特徴を取り入れた二棟の寄棟づくりとしています。
niclassは、食事がつかないタイプの宿になりますが、全室ミニキッチンや冷蔵・冷凍庫、電子レンジ、乾燥機付き洗濯機、トースターや炊飯器などを完備しており、ご自身で料理を楽しむことやバーベキューコンロをレンタルして友人達とBBQをすることもできます。そのほか、気分に合わせて島内の飲食店での交流も楽しめます。
また、シャワールームと別で全室露天風呂があるホテル。天気の良い日は波の音や虫の声、湯船に浸かりながら星空を眺めることもできるかもしれません。
朝ごはんは、前日までにオソノベーカリーやコシキテラス等で焼き立てのパンと島旅珈琲を購入されるゲストも多くいらっしゃいます。
niclass 甑島(ニクラス)
Google 口コミ ★★★★☆ 4.3 (2023.3.19 現在)
〒896-1101
鹿児島県薩摩川内市里町里3254
https://goo.gl/maps/SpxbX4EGpDZVtWZd7
TEL 070-8960-3254
◎ 公式予約サイト https://niclass-koshiki.com
ampersand
下甑島、長浜港から徒歩10分。
宿と食堂 ampersand(アンパサンド)のおすすめのディナータイムは、漁師をしている店主の義理の弟さんの朝獲れの魚介など新鮮な地元食材にこだわっていらっしゃいます。
こちらの宿は、1日1組限定のご案内のため、本当はここで紹介したくないのですが、、、とても素敵なホテルなので紹介します。もしも、宿泊が叶わない場合は、ランチタイムやカフェタイムの利用もできますので、是非そちらもご利用ください。
ampersand(アンパサンド)
Google 口コミ ★★★★☆ 4.5 (2023.3.19 現在)
〒896-1411 薩摩川内市下甑町長浜1227-4
TEL 09969-5-1018
◎ instagram https://www.instagram.com/ampersand_koshiki/
磯口旅館
下甑島、最南端にある手打集落。
Dr.コトー診療所の原作のモデルになった島でもあります。美しい砂浜と武家屋敷通り、海に抜ける路地や一本道の田んぼをコトー先生が自転車をこいでそうな集落にあります。静かな島の夜と朝のBGMは、波の音。寄せては返す、自然のリズムで目を覚ます。
宿のご主人と奥様の飾らないおもてなしと、「今日、漁港にウミガメがいるよ」「今から魚を買いに行くけど、一緒に船まで行きますか?」そんな島の日常を感じられる民宿です。
磯口旅館
Google 口コミ ★★★★☆ 4.6 (2023.3.19 現在)
〒896-1601 鹿児島県薩摩川内市下甑町手打792
TEL 09969-7-0552
◎ E-mail y_nozaki@nifty.com
ほかにもオススメしたい民宿や旅館がありますが、今回はひとまずここまで、、、
甑島に着いていざ観光しようと思うと、やはりレンタカーがあったほうが何かと便利ですね。ただ、数日間滞在されるという方は、そのうちの1日だけ、半日だけ、はあえて歩いて過ごしてみるとか、レンタサイクルで慌てずにゆっくりと巡ってみるというのもいいかもしれません。
天気が良ければ、里集落の武家屋敷通り(ケイダストア横)の駐車場に車を停めて、まずは玉石垣と呼ばれる特徴的な石垣の集落を歩いてみてください。
あぁー島に来たんだ。
と、いうことを感じずにはいられません。
琉球文化の北限とも呼ばれることもある甑島は、古くからの甑島の民俗芸能が遺され、薩摩の武家文化と自然環境や海流などからくる南方系の文化も入り混じった独特の雰囲気をまとっています。近くには、琉球人墓地があったり、沖縄でもよく見られる石敢當などもあったりするので見つけてみてください。ヒントは、丁字路。
山下商店甑島本店
武家屋敷通り周辺には、
カフェやレストランがあまりありません。散策の途中で、山下商店甑島本店という集落唯一のとうふ屋に立ち寄ると、、、豆富はもちろんですが、甑島産のアロエを使用したビールや、柑橘系のクラフトソーダ、地元の焼酎やコーヒーなども昼間から楽しむこともできます。夏は、期間限定で「とうふ屋さんのかき氷」も人気メニューだそうです。
とうふ屋さんのかき氷 → https://www.instagram.com/explore/tags/とうふ屋さんのかき氷/
そんな山下商店甑島本店の隠れたおすすめは、実は夜。金曜と土曜日限定となりますが、甑島では貴重な?シマバルというバータイムを(20:30-23:00頃)営業しています。バーと言っても、背伸びせずにサンダルでも気軽に行けてしまうような雰囲気です。
山下商店甑島本店
Google 口コミ ★★★★☆ 4.2 (2023.3.22 現在)
〒896-1101 薩摩川内市里町里54
https://goo.gl/maps/wYWy2fbhZDKe2bcL7
TEL 09969-3-2212
平日 8:30-12:00/15:00-18:00
土日 9:00-12:00/14:00-17:00
金土シマバル 20:30-23:00
※ 水曜日と木曜日が定休になることが多い
◎instagram https://www.instagram.com/yamashita.st/駐車場 2台
※大きな車は漁港周辺に駐車ください
海岸線を歩いてみると、島の暮らしをより感じることができるでしょう。
海という存在は、観光で訪れる皆さんにとっては、レジャーの一部に見えているかもしれませんが、島民にとっての海は、まさしく生きる場所。海と共に暮らし、海の恵みによって生かされている。
港周辺には、沖から戻ってきた漁師たちが腰掛けて情報交換をしていたり、やぶれた網の補修をしていたり、獲れたての魚やイカを干す家族の姿、遠くの海を眺めて今日一日を想う人。
そんな人生を垣間見る、
日常の風景と出会えるかもしれません。
パンと週末食堂 オソノベーカリー
集落の海辺を散歩していると、
ひときわ大きな木があります。
その木の名前は、あこう。甑島は、四方を海に囲まれた風の強い島でもあり、あこうの木が台風や冬場の季節風から集落の家々を守ってきました。また。この木には昔から精霊が宿ると言ういい伝えがあります。
そんな大木を目印に、あこうの木の下にひっそりと集落唯一のパン屋さん「オソノベーカリー」があります。
オソノベーカリーは、2021年にオープンしたばかりですが、建物は懐かしい雰囲気の残る佇まい。本来は、武家屋敷通りにあった武家屋敷を移築してきたもので、その名残を上手に残しながらのリノベーションがされています。
元あるものを生かした新しいスタイルのパン屋で、平日は、なんと朝の2時間ほどしか空いていません。モーニングやオソノ特製のカレーランチ、喫茶タイムは、土日の週末と、ときどき祝日の営業となりますのでお気をつけください。平日でもたまにスタッフが中にいますので、お気軽にお声がけください。
オソノベーカリーには看板がありません。
また、お車のカーナビには表示されない場合がありますので「Google map」で検索されてみてください。ここで、食事のあと気持ちよくてうとうとして横になっているゲストもときどきいます。甑島にまつわるたくさんの書籍や、「Dr.コトー診療所」の全巻も揃っていますので、ここで読書しながらゆっくりお昼寝もいいですね。
雨の日も島の雰囲気を感じられて、とっても心地よい空間です。
オソノベーカリー
Google 口コミ ★★★★☆ 4.7 (2023.3.23 現在)
〒896-1101 薩摩川内市里町里259
TEL 09969-3-2501
月火金 8:30-10:00
土日 8:30-16:00
◎WEB https://island-ecs.jp/osonobakery/
◎instagram https://www.instagram.com/osonobakery/駐車場 3台
あちこち観光しようと意気込んで、車で移動してしまうとたくさんの島の風景を見落としてしまう。ゆっくり歩こうと思えば、足元の小さな花の美しさや鳥の声に気がつくことができる。
なんだか、旅も人生も同じよう。甑島に来たなら、やっぱりここにある暮らしを感じて、ゆっくりしてほしい。
そして、思いを残して、
また何度でも、通って欲しいと
私は思う。
コシキテラス
断崖クルージングの発着港でもある
旧中甑港旅客ターミナル
中甑と言っても、、、少し分かりにくいですが、場所は上甑島の中甑集落にあります。そこのターミナルを数年前にリノベーションし、現在は、カフェやレストラン、お土産物店を併設した道の駅のような役割を担っています。
人気のランチメニューは、スペシャル断崖バーガー。テレビや新聞、雑誌など全国の様々なメディアでも紹介されており、滞在中に一度は食べたいメニューのひとつ。その他のメニューも、甑島産の食材を使用した定食や、お子様連れでも安心のお子様ランチなどもあります。
ドリンク類も甑島産の柑橘系フルーツソーダや橙果汁たっぷりのクラフトコーラ。暑い日にはぴったりの甘酸っぱさが嬉しい「きのすゼリーミルクラテ」。そして、なんと言っても人気の「島旅ジェラート」があります。こちらは、お取り寄せもできます。https://shop.island-ecs.jp/?pid=163295628
コシキテラス
Google 口コミ ★★★★☆ 4.0 (2023.3.23 現在)
〒896-1201 薩摩川内市上甑町中甑383-3
https://goo.gl/maps/gm96qxbMmu42YTYZA
TEL 09969-2-0525
営業時間 10:00-16:00
※ 水曜日と木曜日が定休になることが多いです
◎WEB https://island-ecs.jp/koshikiterrace/
刻々と変化する東シナ海に沈む、夕景。
毎日、違った表情を見せてくれるので、いつまでも見ていられます。夕暮れがやってくるといつも思い出すのが、谷川俊太郎さん作の「朝のリレー」と言う詩。甑島に真っ暗な夜がやってくるということは、この世界のどこかに朝がやってきている。
それは、どんな朝だろう・・・
”カムチャツカの若者が
きりんの夢を見ているとき
メキシコの娘は
朝もやの中でバスを待っている
ニューヨークの少女がほほえみながら
寝返りをうつとき
ローマの少年は柱頭を染める
朝陽にウインクする
この地球ではいつもどこかで
朝がはじまっている
ぼくらは朝をリレーするのだ
経度から経度へと
そうしていわば交替で地球を守る
眠る前のひととき耳をすますと
どこか遠くで目覚時計のベルが鳴っている
それはあなたの送った朝を
誰かがしっかりと受けとめた証拠なのだ”「朝のリレー」谷川俊太郎
できれば、いつもより少しだけ
早起きして一度きりの朝陽を見に行こう。
島の東側の海岸に出ると、白波を立てながら漁船が島にもどってくる。漁師たちの無線のやりとり。鳥のさえずり、漁港へ急ぐお母さん。九州本土からのぼってくる太陽と水面のきらめき。こうして、ゆっくりと歩くことで見えてくる、この島のリズム、この島で生きるリズム。
ここにある日常が、たまらなく愛おしい。
この先もずっと、この日常が続いていくために、私たちには何ができるだろう。island companyの物語もつづく・・・
書いた人