島に生きるひと #02 第十一寿恵丸

東シナ海は、魚の宝庫。
甑島の近海にも、たくさんの魚たちが元気に泳ぎまわっています。中でも水揚げ量の多いキビナゴは、甑島だけではなく鹿児島県にとっても欠かせない郷土食材のひとつ。今回は、そんな甑島の顔ともいうべきキビナゴのお話です。

深夜1時半。漆黒の闇に包まれた港から出港する1隻の漁船。代々漁師を営んできた日笠山誠さんが舵を取る第十一寿恵丸です。乗組員は誠さんと従兄弟の吉平さんの二人。彼らの長い夜が今夜も始まります。

キビナゴを獲るにはまずポイントを見つけなくてはなりません。魚群探知機と睨めっこしながらキビナゴの群れを探すこと数時間。ポイントに当たると魚群探知機の画面が真っ赤に染まります。

ここからはスピード勝負。
二人が抜群のコンビネーションで作業を進めていきます。

甑島のキビナゴ漁には「刺し網」という漁法が用いられ、水中灯とよばれる大きなランプを漁網に取り付け、海中に網を仕掛けていきます。明るいところに向かって泳いでいくキビナゴの習性を利用して、網に向かって泳ぐように仕向けるのです。

大急ぎで碇を下ろし、集魚灯をつけ、刺し網を張る。しばらくすると、二人は呼吸を合わせるように網を巻き上げます。そしてパンパンと軽く網を叩き、網に刺さったキビナゴを次々と落としてしていきます。光を浴びて青色とも銀色ともつかない輝きを放つキビナゴの美しさといったらありません。

船上にあがったキビナゴは瞬時に氷水に浸けられ、間髪入れずに次のポイントを探します。この作業を繰り返し、船が帰航するのは朝の5時半。漁師の仕事は毎日が真剣勝負。気力と体力、そして情報の蓄積が必要とされる仕事です。

キビナゴは年中獲ることができる魚ですが、甑島の漁師たちは自主的に「産卵期は主要な産卵場を禁漁区にする」「小型のキビナゴを獲らないよう小さい目合いの網を使わない」など"漁師の約束"と呼ばれる六ヶ条を設けて乱獲を防いでいます。

すべては甑島の美しい海とその生態系を守るため。こうした漁師たちの取り組みは、農林水産大臣杯にて天皇賞を受賞し日本一のきびなごと評されるまでになりました。

船長の誠さんは言います、「本物のおいしさを知ってほしい。」

キビナゴはとても小さな魚ですが、その小さな身体には島の漁師たちの深い愛情とその努力が詰まっているのです。

日笠山 誠

島に生きるひと #02

profile
日笠山 誠
第十一寿恵丸
日笠山水産 代表
豊かな資源を獲るだけでなく、育てる漁業にもいち早く取り組む。
キビナゴ漁の他、平成8年にカンパチの養殖業をスタート。
島の将来を見据えるこだわりの頑固漁師。

真剣な眼差しの誠さん
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緊張の瞬間
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仲間の船にキビナゴを託す
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新鮮なキビナゴの刺身
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